性感染症について

性感染症は、性的な行為によって感染する病気の総称です。なお、ここでいう性的な行為とは、性交だけでなく、オーラルセックスなどのように粘膜が接触する様々な性行為が含まれます。以前は性風俗店などにおける不衛生な性行為による感染が多かったのですが、最近は、不特定のセックスパートナーとの性交渉やセックスの多様化などにより、ごく一般に広まっています。そのため、風邪のときに見られる咽頭痛などの症状で性感染症が発見されるケースも少なくありません。尿道口から浸出液や膿が出る場合や、排尿時に痛みや違和感が目立つ、性器周囲の皮膚の異常などがありましたらご気軽にご相談ください。

淋菌性尿道炎

淋菌と呼ばれる細菌が原因となる性感染症です。潜伏期間は性交から2~7日程度で、男性の場合、排尿痛や尿道灼熱感、黄白色の尿道分泌物といった症状が出ます。10-30%で咽頭感染併発し咽頭痛や嗄声が併発することがあります。また下記のクラミジア尿道炎が同時に感染している場合が20-30%であります。
女性の場合は無症状か軽度な症状のため見過ごされやすく、不妊の原因になることがあります。再感染を防ぐといった観点からもパートナーの診断治療も必要となります。
治療は主に抗菌薬の点滴静注単回投与を行います。

クラミジア性尿道炎

クラミジア尿道炎は、クラミジア・トラコマティスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間は性交から1~3週間程度の潜伏期間で軽度排尿痛、透明な尿道分泌物を認めます。症状がほぼなく、パートナーが陽性のため症状がないにもかかわらず診断のために受診されることもあります。女性の場合も無症状のことがありますが、おりもの性状変化、不正出血、下腹部の痛みなどが起こることもあります。ただし、放置していると不妊や異所性妊娠の原因となります。妊婦さんの場合、胎児へ産道感染すると、クラミジア結膜炎やクラミジア肺炎を引き起こすこともあります。
治療は主に単回投与の経口抗菌薬を使用します。

梅毒

梅毒は、梅毒トレポネーマが性交などで皮膚や粘膜の微細な傷から侵入して起こる感染症です。1948年以降減少していましたが2011年より増加傾向、2021年以降大きく増加し男性は20代から50代、女性は20代が突出して増加しています。

感染すると1ヵ月前後で性器や咽頭に、痛みの少ないもしくは無痛性のしこりができます。
1~3ヵ月後に痛み、かゆみのない発疹が手のひら、足の裏、体中に広がります。その後自然に症状が軽快して潜伏、治療をしないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、時には死にいたることもある疾患です。

検査としては診察と採血による抗体検査をおこない、治療としてはペニシリン系の抗菌薬(内服薬・注射)を行います。その後も定期的なフォローアップを行います。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは性器や周辺皮膚や粘膜に水泡や潰瘍、疼痛をきたす疾患です。
ヘルペスウイルスが原因となって引き起こされ、初回感染の場合感染機会から2~10日後に小水泡やびらんが出現します。治療は抗ヘルペスウイルス薬を使用します。再発を繰り返す場合は再発抑制療法などの追加治療を検討する場合があります。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスが原因の性器や肛門周辺などに、先の尖った特徴的なイボが多発する疾患です。痛みなどはほとんどありません。
治療としては外用薬塗布を辛抱強く行います。しかし効果不良の場合などは、液体窒素を用いた凍結療法や外科的切除を行うこともあります。